8月の六甲山夏行吟行は、句会は予定されていませんので油断すると一句もものに出来ないという事態を招きます。

暑い時期だし、気軽な避暑旅行なんだから楽しければいいのよ。

という声も聴こえてきそうですが、とりあえずこの予習講座を最後まで読んでみてください。

ほ句の秋

と言われるように秋は、季語が豊富なので最も俳句の詠みやすい季節です。

吟行予定の8月22日は、暦の上では秋ですし、標高1,000mの六甲山上は、外界より5〜6度気温も低いですから、初秋、秋立つ、新涼、爽やか 等々の季語を詠むにはもってこいです。

秋涼し

この季語ご存知でしたか? 新涼と同意の季語として存在します。

必要以上に秋を意識しなくても構いません。 下界はまだまだ残暑の時期ですから、夏の季語「涼し」を使って詠むことは咎められることではありません。馬柵涼し、牧涼し、バス涼し、堂涼し、館涼し、風涼し、樹下涼しなど、涼しさを感じる素材は無尽蔵にあるはずです。

六甲山で使えることば

「六甲」という固有名詞を句に詠み込むのは意識して極力避けるようにしてください。

高山にある牧場なので、高牧といえば、六甲山牧場のような山の牧場であることが説明せずとも連想できます。また、牧場には必ず 馬柵(ませ) があります。馬柵=牧場 とも言えるので、馬柵を詠むだけで牧場を連想させることができます。

また、牧場(ぼくじょう)と読ませると5文字ですが、牧(まき)という表現を使えば2文字で済みます。こういった点も上手に使い分けしましょう。

見晴らしのきくところでは、つい遠景にとらわれがちですが、六甲では深い峪を鑑賞してみてください。錦繍の峪にはまだまだ早いですが、濃い緑を湛えた深い峪もまた、秋の峪 です。

秋の峪とうんと銃の谺かな 青畝

この句は、摩耶山で詠まれた作品です。六甲山は禁猟なので銃声は青畝師の心の耳が聞いたのでしょう。

六甲山は手軽な避暑地としても有名なので、避暑の旅、避暑散歩、避暑の道などの感興も得やすいですね。ロープウエイ、ゴンドラ、ケーブルカーなどは、季感はありませんが、上手に組み合わせると六甲ならではの風景を詠むことができます。

ロープウエイ指呼の奈落に一瀑布 みのる

新しさを醸し出す句風

秋の牧、秋の風、秋の山 と詠むのと、牧の秋、風の秋、山の秋 と詠むのとの違いがわかりますか?

前者は、季語ありきで考えてしまうので得てして季語の説明句になりやすいです。一方後者の場合、季語はあとづけなのです。具体的な事象を詠んで、それにふさわしい季語はと心を遊ばせているうちに響いてくる感興なのです。ことばで説明すると解りにくいですが、是非挑戦してみてください。

感覚的な季語を使うには具象的な写生が大切

秋惜しむ、秋を聞く、秋の声、秋思、爽やか、新涼など、秋は感覚的な季語が多いですね。六甲山吟行に限らずこれらの感覚的な季語を詠むときには、鉄板の秘訣があります。

感覚的な季語を使うときは、必ず具象的な写生をすること。

ということです。「感覚的な季語+心象句」は、具体的な情景を連想できないので独りよがりの作品になります。

できれば詠まれた作品のすべてを添削に送ってほしい

強制ではありませんが、牧場で20句、摩耶山で20句、その他の移動中に10句、合計50句を目標にしましょう。粗製乱造で構いません。とにかく多作することです。

添削句を定例句会に出句するのは心苦しいという方は、定例句会のあとからでもいいので句帳に残った作品の全てを送ってください。添削で選ばれた句を毎日句会に投句されたらいいと思います。

あとがき

事前の予習をまじめに考えすぎると逆効果になるので読み流す程度で十分です。どこに何があるのかというような情報は大切ですが、歴史的背景や謂れ、固有の特徴等に拘りすぎると憑きすぎや類想の句になるので注意しましょう。

かえってみなさんを迷わせるような記事になったかもしれませんね。当日句会はありませんので予め安全パイの句を準備する必要もありません。頭の中、心の中をからっぽにして吟行句会を楽しみましょう。